福寿草が地面から低く、小さな金色を広げる。又の名の元日草は、遅れた新春に誇らしい。

銀盤に降り立つ鷲は金銀を奪い、己の約束を果たす鷹が銅を取る物語の後、誰も知らない自分色のメダルをそっと夢みる。

朝のオール雪景色に、日本が取った五輪メダルみたいに心が満ちる。紅梅に雪のトリミングを、1分9秒98の美しさに重ねて見る。

五輪開会式に歌う永遠の青年は誰だ。茫茫とした記憶を破り、ブライアン・アダムスがペアで立ち上がる。先住民の太鼓や踊りと響き合い、バンクーバーから世界を迎える。

塩抜き中のアサリが、ぷくっと泡のつぶやき。殻ふれ合って、人間はこんな美しい模様は作れない。

ゴーッと地鳴りが全身に入る。住宅街の解体工事は、ハイチ地震の映像に吸い込まれて、無音になった。

氷点下で始まった立春の朝、顔を洗えば、地下水を混ぜた春水が走ってきて、指先から 温める。

立春への陽射し、樹影の織り成す歩道を行く。マッキアイオーリの思いが移り、斑点（マッキア）で素早く明暗を捉えて、イタリア印象派の借景に遊ぶ。