2011-01-01から1年間の記事一覧
4月に来日のドミンゴをTVで観る。遠い日、国立競技場ライブの記憶が迫る。堂々たる体躯のオペラ王が歌う「ふるさと」は、大和魂を震わせ心に染みて涙がこぼれる。
3.11から2ヶ月に「もう」か「未だ」の副詞を選べない。「普通」を喪失をした暮らしを想像力で分かち合うことはマナーだ。がそれ以前に行方不明の家族を探し続ける映像は消えない。
混乱の日本で浜岡原発が止まろうとしてる。みどり萌える季節の今、静岡県産の新茶をゆったりと味わえば、少しずつ鎮まっていく気配がきゅうくつな幸せをくれる。
庭の鈴蘭が姿も香りも可憐だ。別名の君影草を呼べば、亡き母の手植えと今まで及ばなかった空間ー東京大空襲で何もかも失った昔話ーが現実味をおびて五月の新緑に滲み出す。
ラジオから京都刑務所の人々が義援金を送ったと知る。マグマの力は私の中の善悪や美醜のプレートもガクンとずらし、意識の水が跳ね上がった。これからの在り方を大事にしたい。
大学生と世代の違う市民が、共に学ぶ教室の様子が昨年と違う。大震災の共通体験は、分け隔ててきた壁を崩し、冷静に熱気も合わせ持つ斬新な空気感を作り出す。
米タイム誌が今年の世界の100人に福島県南相馬市長を選んだ。いつか再生日本に首相が名を成す時、「選ばれるべきは市民(国民)」と応じるに違いない。やっぱり明日に向かって行かなくちゃ。
家事をする時、避難所の洗濯や干すことの困難さに思いが巡る。今日の被災者数、避難13万3千454人はわが街の人口に近い。失われた日常を想像し続けようと気持を強くする。
若葉と薄紅色の花ミズキ、光がおぼろにさし入る。近い街路樹の風景に、今ここでの無事が身体に浸み込む時、生きていくことをパステル画のように美しく確認する。
遅れて咲いた庭の水仙を生ける。一茎から7個も8個もの花が全方位に開き香りが立ちのぼる。馴染まない何かが部屋の空気を包み、例年とは全く違う日本の春が忍び寄る。
電車や駅の暗さに想像を絶する大災害だった、と経験のない思いが散り散りに去来する。命日の今日、己を犠牲にした職員、奪われた無念の生命にそっと手を合わせる。
散歩に行くとCGのような綺麗な青空の桜に、3.11後の気分が乗らない。気を取り直すと背後の大きな欅の芽吹きは、無数の小花のようにさわさわ揺れて心が和む。
読み納得して味噌汁に豆腐と納豆を入れる。江戸時代も被災者は食べたと知る。1杯で1日分のたんぱく質。茶色につぶつぶと見え隠れする白色は助けあって、今日の元気をくれる。
体のどこかがキュッと縮んだまま、丁寧にインスタントコーヒーを入れる。避難所の人びとも飲めるように願いつつ祈りつつ。この食品は日本人が最初に作ったとの話を誇らしく思い起こす。
目覚めると血塗られた片耳の夢の残像。大震災ドキュメントにパンクした模様。津波に耐えて残った高田松原の一本松に、後方の自分を見直し聞く耳を持つことを誓う。
いつものスーパーに入ると節電で暗い。首都圏の電気は福島県が3分の1担ってきたのだと思い知らされる。明るさを欠いてやっと想像力のベクトルが、原発周辺の人びとの今の暮らしに及ぶ。
被災地の生の声に呑まれていると、アメージング・グレイスが流れる。アレンジした邦楽の旋律は、世界の多くの人々の魂と共に日本のそばで泣いてるように響き聴こえる。
緊迫した報道に続き、被災した男子中学生の声がラジオから届く。陸前高田の避難所で「命あるだけ喜んで」と大きく書いたと。困難な今を切り開こうとする行為が余震の中で尊く震える。
3.11後、日本の春は行方不明だ。天と地は言葉にならない幾千万の悲嘆の素粒子で埋め 尽くされる。目をそらさずに現実を見つめられる勇気があるのか。試される。
いろいろな考え事も砂時計の3分間までとする。中央のくびれたガラス器に、桃色の砂が素早くもゆっく落下する時間の節度が、飽きない面白さだ。
ショートのヘアスタイルが決まらない私に、最高なのは坊主頭と言う美容師をずっと信頼してる。髪は生命と美髪の仕方も教わった。忘れないでいよう。
寒の戻りのひな祭り。世の中が良くても悪くても、親しい友の手料理を楽しむ。ぼんぼりの灯りのような光度の今日を大事にする。
寒暖の行き来に小言を言う身体の声を聴く。菜の花をさっと湯掻きマヨ和えで食べれば、いつか見た菜の花畑の、そこにいた陽ざしがやさしく降り注ぐ。
東京地方に足早にきた春のなか、中東各国の展開が早すぎる。けどネットサービスと自由を求める人びとのつながりは、旧メディアを超えて大きなうねりで世界を巻き込み止まらない。
毎年、スギ花粉を律儀に受け入れてきた私を出て、今年からずぼら体になる行く手に、心への飛散が少なくなるとの予報。
月が出た。白梅と根元の残雪を照らす。全てがない交ぜになった、何か分からない感覚が立ち現れて、うすい水色の夕暮れは落ち着かない。
2011年のバレンタインデーは、エジプトの市民らと熱いハートのチョコレートを分け合いたい。
久しぶりの慈雨を湛えたひんやり感の空気は、朝から意気込みが違う。工事中の道路にさえ土ぼこりを押さえて、さっと早春の陽ざしを通す。
年を跨いでようやく直ったミニコンポが定位置から音を出す。ポータブルと違い、心持ち動じない深みの空気が振動するような。